iPhone によるアクセシビリティ セミナー

豊平文庫 開発者さんによるiPhone のアクセシビティ解説

iPhone 3.0 の新機能アクセシビティ機能。サービスを提供する企業では義務として捕らえられがち、そして積極的とはいいがたいアクセシビティに関してiPhone アプリ豊平文庫(ほうへいぶんこ)の開発元 快技庵 さんの取り組みました。果たしてiPhone のアクセシビティ では何が実現されたのか?

場所: アップルストア札幌
時: 18:00 ?19:00

内容は1)アクセシビリティの概要、2)豊平文庫での対応、3) 豊平文庫のそのほかの新機能 でした。

■1)アクセシビリティの概要
・必要なスペック:
iPhone OS 3.0 以降と、ハードウェアとしてiPhone 3GS、2009年10月現行iPod touch 32GB、64GB モデル。※2万円モデルは旧モデル扱い

Mac でのアクセシビリティ機能を踏襲しているが、言語の対応範囲はMac より多い

・何ができるの?
a) VoiceOver
b) ズーム機能
c) 白地に黒の表示
d) モノラルオーディオ
e) ホームのトリプルクリップ割り当て

※VoiceOver は以下で詳しく取り上げます。

memo:
アクセシビリティ機能は設定-一般-アクセシビリティ にある

自動テキスト読み上げはVoiceOver との説明と共に解説(iPhone 画面上で別オプションである理由は聞きそびれました)

・VoiceOver
音声での読み上げ&マルチタッチ操作での確認操作

読み上げ機能は速度アップ可能。読み上げになれると早くしても聞きちょれるようになるそうです。

→画面を設定された国・言語で読み上げる。日本であれば日本語で読み上げる(女性の声で読み上げ OS3.1 で性能向上)

→通常操作とは異なる操作形
例1) [UIの選択と決定 その1] - ダブルタップで操作
タップで操作ターゲット決定(矩形表示)、ダブルタップで決定

例2) [UIの選択と決定 その2] - ドラッグ&二本指
一本目の指をドラッグしてターゲット決定、二本目の指をタッチして決定

例3) [UIの選択切り替えと増減]
縦フリックで次のUI へ移動、横フリック&フリック方向で次の要素を選択

例4) ローターコントロール
二本指を使ってアナログノブスイッチの要領でモード変更機能を実現
Safari,UIWebViewでの読み上げ対象切り替え(自然テキスト or タグ解釈)

上記操作は、標準UI のみ。独自UIを持つものは別途対応が必要

■2)豊平文庫での対応
新バージョン(申請済み)の豊平文庫VoiceOver用機能以下新機能追加。設定画面で切り替え可能。

UI 操作の対応もちろん、文章の読み上げにも対応する。

・UI の改良
VoiceOver機能の有効化で4ボタン(次ページ、前ページ、本情報、設定) が表示される。

・読み上げ機能
本文を読み上げる機能。API が無いため受動的な対応しかできないことで苦慮
→文章が連続していないと途切れる
→8000種あるデータ(青空文庫) の内、旧仮名遣いを含む文字の読み上げに不安

いくつか問題もある。
問題1) 読み上げとページ表示が連動しない。
→一定秒数でページは勝手に切り替わるようにした

問題2) 読み上げ終了にアプリに通知がない

問題3) 意味のあるイントネーションを表現&変更できない
変換辞書を使って読み上げているらしい

問題4) 文書が連続していないと途切れる
→自力で合成し読み上げ機能に対処している。

問題5) 入力へのサポートは期待できない
日本語入力の場合は、ローマ字入力とことなり同音異義が多いため難しい

問題6) ふりがなへの対処
ふりがなのOn/Off 機能がついている。文字にふったふりがな で別の意味を持たせるような表現ではおかしくなる?(すいません、この深くつっこめていません)

問題6) ほかのアクセシビリティ向上機能と共有できない
API が無いため一部をキャンセルなどアプリ側制御が不可能

・アクセシビリティのベンチマークアプリの紹介
→Mobile Safari について利便性を語っていられました。ズーム&縮小機能を使って文字を読むのと同様に読み上げ機能以下アクセシビリティに対応済み。

・豊平文庫
上記問題に対応した結果として豊平文庫 の新版が紹介&デモされました。宮沢賢治 の我輩は猫であるとほぼ完璧に読み上げていました。

■3) 豊平文庫の新機能
VoiceOver以外の機能について紹介がありました。

・ページストリーム機能
→パラパラめくる感覚を実現
a) 巻き戻してイラスト確認となどに使える縮小表示
b) タッチスクロールの帯がある
ページを少し戻りたい、先に進みたい場合機能として、サムネイル機能追加、横方向へのスクロールでページをすばやく移動できます。教えなどもサムネイルとして表示されるので、以前の登場人物確認などに便利なサムネイル機能ともいえる

・ランキング機能
最新100、読み込み上記表示機能などが追加されました

■4) まとめ
豊平文庫 開発者さんは以下の3つをアピールしました

1) iPhone OS 3.x は実用的なアクセシビリティ
3.0 →3.1 での性能向上からApple は真剣に取り組んでいると見受けられる

2)ユニバーサルな機能
→多言語対応とSafariでの対応している。

3) VoiceOverは短期間で進化した
API 化されればもっと使いやすくなるはず。
日本語への更なる対応。入力への対応は期待したい。

■5) 質問
質問への解答に対して。豊平文庫 開発者さんによる発言として全盲 の方のメーリングリストで、iPhone、iPod touch に切り替えた話が紹介されていました。

■6) 感想
新バージョンの豊平文庫を使った読み上げは驚かされました。宮沢賢治の平易な文章とはいえ読み上げ機能は破綻無くほぼ正確に読み上げました。

文字入力機能は難しいかもしれないが、ボタンを押すなどの操作は慣れることで比較的高速にできそうです。しかもiPhone だけでなくiPod touch でも対応していることで、アクティビティを必要としている方々への安価な操作UI & 高性能コンピューティングの提供ないし提案が可能なように見受けられました。

豊平文庫の新バージョンについてはプログラマとしてみると文書読み上げ機能をなんとか実現しようとしてアプリの更新が滞ってかも、と思いました。これも豊平文庫 がリーダーソフトとして広く使われたいとの思いが込められていると感じまた、セミナーとして広くお伝えいただいたことに感謝したいです。

以上です。